【のびのびトイロ】vol.17 子どもが過去の嫌な経験を何度も思い出します。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」では、子育て中の不安や悩みごとを信州大学医学部「子どものこころ発達医学教室」の先生方が答えるQ&Aコーナーを配信中。その中からピックアップした内容を転載して紹介します。【2025年11月号掲載】
【お悩み】子どもが過去の嫌な経験を何度も思い出します。
子どもが過去の嫌な経験を何度も思い出してしまい、対応に困っています。公園の遊具でこわい思いをすると、何週間たっても「こわい」と言います。似たような遊具をこわがることもあれば、急に「○○公園はこわい」と言い出すこともあります。「こわかったね、もう行かないようにしよう」「大丈夫だよ」と受け止めれば満足するのですが、しばらくたつとまた言い出します。どのように対応すればいいでしょう?
児童精神科医の白石健先生がアンサー!
子どもの気持ちを受け止めて、安心させましょう。
子どもの気持ちを受け止めれば満足しているということなので、十分に対応できていると思います。子どもが何回も同じ話をするときには、安心を求めていることがあります。大人としては「どうして何度も?」と感じるかもしれませんが、そこで「こわがりすぎだよ」と否定的な反応をすると、子どもをより不安にさせてしまうこともあります。ご相談にあるようにどっしりと構えて、おだやかに大らかに「大丈夫だよ」と伝えましょう。子どもは親に安心を保証してもらうことで、活動する意欲を持ち、自分の世界を広げていきます。子どもの不安を受け止めるのは、とても大切なことです。
子どもはまだ経験が少ないので、ものごとを感覚的にとらえることがあります。目の前のものごとを過去の嫌な経験と直感的に結びつけて、「嫌だ」と感じることもあります。子どもがそのような不安やストレスを感じていることを軽視しないで、しっかりと受け止めるようにしましょう。そのうえで「○○はこわくないもの」「大丈夫」というメッセージを言葉でも、態度でも伝えるようにしてください。
「話を聞く時間」をつくるという方法もあります。
子どもの思いを受け止めることは重要ですが、毎日何回も同じやりとりをしていると、親のほうが疲れてしまって、対応しきれなくなることもあると思います。「毎回応じているから、いつまでも同じ話をするのかも」「答えるのをやめたほうがいいのでは」と感じることもあるかもしれません。同じ話をする頻度が増えすぎて対応が難しくなってきたら、やり方を変えることを検討しましょう。
対応策として、「子どもの話を聞く時間」をつくるという方法があります。例えば、就寝前には必ず子どもの話を聞くことにします。その時間に子どもの不安をしっかり受け止めるようにして、昼間に同じことを聞かれたときには、「夜、寝る前にお話ししようね」と答えます。そうすることで、繰り返しの回数を減らせる可能性があります。
ただし、昼間でも実際に嫌なことが起きてしまい、子どもがすぐに話をしたいと感じることもあります。そのときは例外として対応しましょう。
嫌な記憶を増やさないように配慮するのも大切です。
嫌な経験というのは印象に残りやすいものですが、そういう記憶があるからこそ、同じ失敗をしないように用心できるという面もあります。ですから「嫌な思い出」を否定する必要はありません。ただ、嫌なことを鮮明に覚えてしまう子もいます。そういう子は、つらい思いをした場面を何度も思い出すことがあります。そのように、過去の記憶がふとした瞬間に鮮明によみがえることを「フラッシュバック」といいます。
子どものなかには「新しい体験」や「不快な感覚刺激」などが極端に苦手だという子もいます。そういう子は、苦手な経験を強く記憶してしまい、あとで苦しむことがあります。子どもにそのような特徴がある場合には、嫌な記憶を増やさないように配慮することも大切です。例えば、活動の内容を事前に伝えたり、本人が使い慣れているものを用意することで、安心材料を増やせる場合があります。安心できる相手と一緒に活動するのもいいですね。感覚的に苦手なことがある場合には、音の大きさを調整することなどで、苦手な刺激を減らす工夫をしましょう。
もしも事前に情報を伝えた段階で、本人が強い抵抗感を示すようであれば、その体験を避けるというのも一つの方法です。嫌な記憶になりそうだとわかっていて、無理にやらせる必要はありません。よほど重要なことでなければ、活動を中止していいと思います。
のびのびトイロ(アプリ)
個性に合わせた多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」では、みなさんから寄せられた不安や悩みごとについて、
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