【のびのびトイロ】vol.8 「やめて」といっているのに伝わらない
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」では、子育て中の不安や悩みごとを信州大学医学部「子どものこころ発達医学教室」の先生方が答えるQ&Aコーナーを配信中。その中からピックアップした内容を転載して紹介します。【2025年2月号掲載】
「やめて」といっているのに伝わらない
子どもが困った行動をしたときには「やめて」と伝えるようにしているのですが、なかなかやめてくれません。例えば、車に乗せると、後部座席から前の座席を蹴ってくることがあります。「嫌だから、やめて」と言うと最初はやめるのですが、時間がたつとまた蹴り始めます。何度も繰り返し伝えても、くせが直りません。どのように対応すれば、やめてほしいということが伝わるのでしょうか。
児童精神科医の公家里依先生がアンサー!
「どうすればいいのか」がわからないのかも
何度も「やめて」と言っても子どもに気持ちが伝わらないと、「どうすればいいのか」がわからなくなってしまいますよね。でもそれは、お子さんも同じかもしれません。車に乗っていると、退屈してムズムズしてくる。それで足を動かしていると、前の座席を蹴ってしまう。親に注意されるので、「蹴ってはいけない」ということはなんとなくわかっている。でも、どうしても退屈して体が動いてしまう。座席を蹴らないようにするために、どうすればいいかがわからない。お子さんも、そんなふうに悩んでいるかもしれません。子どもが特定の行動をやめられないときには、やめられない理由があるのだと思います。「退屈だからかまってほしい」「不安で落ち着かない」「不満がある」といった理由です。退屈や不安に、どう対処すればいいのかがわからない。だから「やめて」と注意されても、なかなかやめられない。そういう事情があるのではないでしょうか。子どもが特定の行動をやめてくれないときには、その行動をよく観察しましょう。行動の前後の様子を観察すると、「退屈だから座席を蹴ってしまう」といった理由が見えてくることがあります。理由がわかれば「退屈しない過ごし方」などを考え、対応することができます。本人が行動の理由を自分で説明できるようなら、「どうしたの?」と聞いてみるのもいいと思います。いろいろなやり方で、理由を探ってみてください。
「やってほしいこと」を伝えましょう
大人は、子どもが望ましくない行動をすると、つい「〜しちゃダメ!」と言ってしまうものです。でも、それだけでは子どもは「どうすればいいのか」をイメージできない場合もあります。子どもに「やめてほしいこと」を伝えてもなかなか通じないときには、やめられない理由を考え、対応法を検討して、「やってほしいこと」を伝えるようにしましょう。例えば、子どもが退屈して車の座席を蹴ってしまうなら、退屈しない過ごし方を考え、それを望ましい行動として伝えます。「痛いから蹴らないで」ではなく、「車の中では〜をしてね」と話すのです。話し言葉では伝わりにくい場合には、絵を描いて見せるのもいいと思います。座席を蹴っている絵に×、絵本を見ながら座っている絵に○をつけて、2つセットで示すのもいいですね。視覚的に見せると、子どもにも理解しやすくなります。
「やめてほしいこと」には注意を向けないように
子どもに望ましい行動を伝えたら、その行動をとっているときにほめたり、励ましたりしましょう。行動に気づいたら、できるだけ早くほめるようにします。子どもに視線を合わせて、具体的に「〜ができたね」と声をかけ、行動できたことをほめます。その子の行動に対して「気づいたよ」「感謝しているよ」という肯定的なメッセージを伝えるのです。肯定的な注目を繰り返すと、望ましい行動が定着しやすくなります。それと同時に、望ましくない行動に注意を向けないようにすることも大切です。「かまってほしい」と思っている子の場合、何かをするたびに注意していると、子どもが「こうすれば親の関心を引くことができるんだ」と覚えてしまうことがあります。そうなってしまわないように、子どもが望ましくない行動をしているときは視線を合わせないようにして、静かに対応しましょう。子どもが反発し、一時的にその行動が増えることもありますが、対応を続けていると、その行動はやがて減っていきます。
のびのびトイロさん
個性に合わせた多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」では、みなさんから寄せられた不安や悩みごとについて、
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