「過呼吸」に対して、どう向き合ったらいいでしょう
【掲載】
長男が小学校で度々過呼吸になります。また「おでこの中がくすぐったい」、「なんかぞわぞわして、変な感じ」と訴えることがありますが、その表現がよく分かりません。息子は全校生徒の前で目立ったことをしても平気なくらい度胸のある子で、緊張や不安が引き金になったわけでもなさそうです。夫婦にとって、初めての子ということもあり、2人目ができるまでは特に神経質に育ててしまったことが原因かも、と反省する面も多々あります。「息ができない。苦しい!」と絞り出すような声で訴えられると、どうすればいいか分からず、「両手で鼻と口を覆って、ゆっくり呼吸してごらん」、「大丈夫だよ」と声をかけるくらいしかできません。過呼吸は慢性化しやすいと聞いたのですが、ずっと付き合っていかなければいけない病気なのでしょうか。
(松本市/匿名)
お子さんは何年生ですか? 想像するに、全校生徒の前で目立ったことができるということは高学年でしょうか? ここでは、息子さんが今までに医療機関で過呼吸あるいは過換気症候群と診断してもらったという前提でお話します。
過呼吸のきっかけは「言い表せない、漠然とした、でもとても大きな不安」であることが多いです。まず、舞台度胸があることと過呼吸になりやすいことは相反するものとして考えないほうがいいと思います。最近のテレビで、あるアイドルグループのお姉さんがステージの側で過呼吸になるシーンが放映されていました。人前で実力を発揮できたり、勉強を頑張ったり、友達と仲良くできたりするのは、その子が普段から、恥ずかしい、怖い、嫌だといったような自分のマイナスの感情を上手にコントロールできているからなのです。もちろん無意識に、です。
しかし、そうすることは大人でもとても大変なことで、特に子どもにとってはある意味「無理」をしていることになります(子どもは本来自分の感情に正直な生き物ですから)。
そうしているうちに、見えないストレスがだんだん心の中に積もっていきます。そして、失敗しないように上手くやろうという気持ちが強くなればなるほど、逆に失敗したらどうしようという不安が大きくなっていき、ちょっとしたミスや心配が引き金になって過呼吸が起こってくるのです。
そのため、過呼吸は自分に厳しく、繊細で真面目ないい子タイプの子どもに比較的多く見られます。とてもいい子なのに自信がなく自分に満足していない子どもが、疲れてきたり、失敗するかもしれないと思ったりしたときに、急に不安が膨れあがって呼吸が速くなってしまうのです。
発作は息ができなくなるかもしれないという恐怖心を伴うので、どんどん呼吸が速まり、換気しすぎて血液中の二酸化炭素が低下することで、手足が痺れたり硬くなってしまったりすることもあります。
発作が起こってしまったときには、本人の不安を煽らないようにすることが大切です。前兆のようなものや起こるかもしれないという不安をお子さんが訴えたときには、不安そうな表情をせず、努めて冷静に対応しましょう。大人が不安に思っていることが伝わると、ますますお子さんの不安が増大してしまい、発作が激しくなってしまいます。内心は心配でも、ちっとも心配していないフリをして、笑顔で「大丈夫だよ」と静かに声かけをし、座らせて体を支えてあげながら、「鼻からゆっくり息を吸って、口からゆっくり吐いて~。そうそう、大丈夫、大丈夫」と呼吸をゆっくりするように誘導しましょう。
どうしても速くなってしまうときには、紙袋を口にあてて、吐いた空気をまた呼吸させましょう。そして発作が治まったら、「治まってよかったね」と言ってあげましょう。またなってしまうのでは?と不安になるようでしたら、普段からポケットなどに畳んだ紙袋を携帯させてあげるといいですよ。
日常生活では、いい子の部分だけでなく、失敗や悪い子の部分も含めたお子さんの存在自体を認めてあげて、自信をつけさせてあげましょう。一番目の子どもはお手本がないので、(私を含め)親は我が子が困らないようにと思うあまり、こうしようねとかああしないようにねとか、先々の物事を指示的に言ってしまいがちなのですが、ときにはお子さんの思うようにやらせて、失敗しても自分で決めてやれたのだということを認め、結果ではなくプロセスを褒めてあげるような機会をもつことで、自分で決めて自分でやるという達成感とともに自信も育っていくのではないかと思います。