「マイコプラズマ肺炎」について教えてください
【掲載】
「RSウイルス感染症(=前号で掲載)」と同時に現在流行っているという「マイコプラズマ肺炎」について、なるべく詳しく教えていただきたいです。
(匿住所╱匿名)
【編・補】前号同様、原因や対処法、予防手段についても、ぜひ言及ください。
マイコプラズマは一般の細菌とは異なる性質を持った病原体で、一般的に「マイコプラズマ」と呼ばれているのは、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumonia)という種類の菌です。
肺炎マイコプラズマは、感染すると肺炎や気管支炎だけでなく、他の内臓にも病気を引き起こすことがあります。感染者の飛沫(咳やくしゃみ、会話などで飛散する唾液)への接触で感染します。潜伏期は2、3週間とかなり長く、やっかいなことに、いったん感染すると症状が改善しても数週間~数ヵ月間は排菌しているため、流行が長く続きやすいのが特徴です。予防方法としては、手洗い・うがいをしっかりすること、患者との濃厚接触(長時間部屋の中で遊ぶなど)を避けるといった一般的なものしかありません。
マイコプラズマは主に気管支炎や肺炎など、気道感染症状を引き起こします。通常子どもの風邪症状の時に処方されるセフェム系やペニシリン系の抗生剤は効かないので、何度か通院してから診断されることも珍しくありません。
症状の特徴としては最初に発熱や全身倦怠感、頭痛などがあり、3~5日目頃から咳が出始めます。最初は軽い乾いた咳ですが、徐々に強くなって痰がらみになり、いったん出だすと止まりにくいしつこい咳になってきます。この咳は、熱が下がった後も3、4週間続くことがあります。また、経過中に喘息のようなゼーゼーという喘鳴を伴ってくることもあります。
高熱を伴わず、ひどい咳だけの場合もありますが、重症例では高熱が4、5日以上続き、強い咳を伴って全身状態が悪化し、肺炎を併発して入院治療が必要となります。また、1割前後の例で体に赤い発疹が出てくることがあり、その他には声がれや耳・のど・胸の痛みなどが伴ってくることもあります。マイコプラズマ感染症の肺炎・気管支炎以外の合併症としては中耳炎、髄膜炎、肝炎、心筋炎、関節炎など他にも様々な病気があります。
診断は症状の経過と診察所見、検査結果などをもとに行います。検査はのどの分泌液を培養するものや、血液中の抗原(菌体の一部)や抗体を調べるものなどがありますが、医療機関によってできる検査は異なっています。培養検査は、菌が生えてくるまで約1週間かかり迅速性に欠けるので、一般のクリニックではあまり行われていません。治療としてはマクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効で、これに症状に対する咳止めや去痰剤、気管拡張剤などの薬物療法を併せて行います。
学校や保育園を休む期間の目安には、インフルエンザのように明確な基準は設けられていませんが、発症後約1週間は排菌量も多く咳がひどいことが多いため(咳をすると約3m先まで唾が飛散することがわかっています)、熱が下がってもひどい咳をしているこの間は登校・登園を控えていただいた方がいいでしょう。その後は主治医の先生の許可が出れば登校・登園を再開できます。
マイコプラズマ感染症は家族内での流行も多いので、家族の誰かが診断された場合、その2、3週間後でも他の家族にひどい咳が出始めたら、早めに受診して有効な抗生剤を処方していただくことをお薦めします。