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「RSウイルス感染症」について教えてください

【掲載】

「RSウイルス感染症」が流行るとテレビで報道されていました。初めて耳にした病気なのですが、それだけに不安です。どういう病気なのか教えてください。

(松本市╱匿名)

RSウイルスは気道感染症を起こすいわゆる風邪ウイルスの一種で、初冬から春にかけて流行します。他の風邪ウイルスとの大きな違いは、2歳未満の乳幼児に感染すると重症の呼吸障害を起こすことがある点です。1歳未満の乳児では、特に注意が必要です。

感染経路は飛沫(くしゃみや咳などで飛散する唾液)感染や、ウイルスが付着した手指への接触感染で、潜伏期は4~5日です。

透明な鼻汁などの風邪症状から始まり、高熱を伴うことは比較的少ないのですが、2〜3日の間に急速に激しい咳が出てきてゼーゼーと呼吸が苦しくなり、重症化すると強い呼吸障害に陥って人工呼吸器による治療が必要になる場合があります(細気管支炎)。

細気管支炎症状の特徴は、息が早くなる(多呼吸)、息を吐くときに「ゼーゼー」する(喘鳴)、息を吐きにくくなり時間がかかる(呼気延長)、鎖骨の上や肋骨の間が息をする度に凹む(陥没呼吸)、肩で息をするなどです。睡眠もとりにくくなり、哺乳困難や食欲低下を伴って脱水が進むと高熱がなくてもぐったりしてきます。生後3ヵ月未満の乳児が感染すると、呼吸困難だけでなくチアノーゼや、呼吸が止まってしまう無呼吸を起こすことがあります。

インフルエンザのように鼻の粘膜を拭っておこなう抗原迅速検査があるのですが、残念ながら現時点では入院している患者さんや乳児、重症化しやすいリスクのある幼児にしか保険適応がないため、一般の外来では検査をせずに臨床症状と経過から診断することが多いようです。

RSウイルスに対する特効薬はなく、抗生剤も効かないので、各々の症状に対する対症療法がおこなわれます。6ヵ月未満の乳児ではRSウイルス感染症と診断されると、重症化しやすいため入院治療となる確率が高くなります。

予防のためのワクチンはなく、RSウイルスに対する抗体を流行期間中に月1回ずつ注射するという予防法がありますが、この薬はとても高価で、しかも保険適応で注射できるのはもっとも重症化しやすい35週以下の早産児や心疾患、慢性肺疾患をもつ2歳までの乳幼児に限られています。

RSウイルス感染を防ぐためには、流行期にはむやみに人混みに乳児を連れて出かけないようにしたり、大人が家に持ち込まない(大人がかかると、軽症で風邪症状程度のことが多いです)ようにしたりすることが重要です。また、保育園・幼稚園などに通っている未満児のお子さんでは、園にRSウイルス感染が流行してきたら、日々のお子さんの様子に十分注意して、右記のような症状があれば、高熱がなくても早めにかかりつけ医を受診することをお薦めします。