集団遊びやごっこ遊びが苦手。もしかして「アスペルガー」?
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もうすぐ4歳の男の子です。3歳で保育園に入園しました。入園して半年が過ぎましたが、まだ集団遊びが苦手なようです。「みんなで綱引きするよ」の先生の呼びかけに「僕はしたくない」と1人でブランコをしていたり、「体操はキライだからしない」と言ったり。また、戦いごっこやままごとなどのごっこ遊びもあまりしません。インターネットで調べると、アスペルガーの特徴とよく似ている気がします。発達相談等に行ったほうが良いのでしょうか?
(匿住所/匿名)
みんなと一緒に遊べたらいいのにとご心配される気持ちは、よく分かります。お子さんにはご兄弟がいらっしゃいますか? もしまだお子さんがお一人なら、保育園に入ったからといっても、すぐに子どもたちの中へ入っていくのは、やはり大変なことではないかと思います。入園前には自分のことをよく分かってくれて、言うことを聞いてくれたり、譲ってくれたりする「大人」のお母さんやお父さんと過ごす時間が生活のほとんどを占めていましたし、そこではたいていのことは自分の思う通りにいっていたはずです。
ところが、ある日突然、3歳なったから保育園に行きましょうということになり、行ってみたら、そこはまあ、自分流に生きたい子どもばかりの集まりで、自分の思う通りにならないことが何と多いことか! 滑り台やブランコに今すぐ乗りたくても、順番という決まりを守らなくてはならないし、やっと自分の番が回ってきても、横からわがままな子が割り込んできたりするし…。なんて大変な所なんだ、HOIKUEN という世界は! …すみません、あくまでお子さんの立場で物を言っています。
もしかしたら、子どもたちはこんなことを感じながら、徐々にそれらを超える「おともだち」という仲間との「集団遊び」の楽しさを知っていくのではないかと思います。それができるようになるまでにかかる時間は、個々の子どもの性格などによって数日間、数週間、あるいは数ヵ月~1年間と、さまざまだと思います。お子さんはまだその楽しさを味わえていないのかもしれません。ただ、保育園ではみんなと一緒に遊びましょうと言われても、我慢することばかりでそこに楽しいという気持ちが伴わず、義務のように感じてしまうと、ますます気持ちが遠のいてしまう場合もあります。まずは、お子さんの気持ちが穏やかなときに、保育園で何をしているときが楽しいのか聞いてみましょう。そして、それがどうして楽しいのかも聞いてみてください。おともだちについても聞いてみましょう。もしかしたら、仲間に入りたいのに入り方が分からなくて、自分にいらだったりしているかもしれません。
さて、ご心配されているアスペルガー障害についてですが、まず集団の中でのお子さんの様子を毎日見られている保育園の担任の先生に、お子さんの様子をお聞きになってください(コツは「アスペルガーっぽいかどうか」を尋ねるのではなく、「普段の様子がどうか」ということをお聞きになってくださいね)。担任の先生がお子さんの言動に問題意識を持っておられるようでしたら、かかりつけの小児科医や地区担当の保健センターなどへご相談してください。
ただ、ここで重要なことは、お子さんを評価・診断することではなく、あくまでもお子さんが集団の中で困ったりせずに楽しく生き生きと生活できるようにすることです。今は情報が氾はんらん濫していて、チェックリスト的なものも簡単に見ることができるので、当てはまることが多いと、つい心配になってしまうお母さんたちも少なくありません。ただ、そういったチェックリストは、それだけで診断できる決定的な根拠にはなり得ないことも事実です。「この子はアスペルガーじゃないかしら?」という、不安を持った眼ま なざ差しをお子さんに向けてはいないか注意してください。子どもは親の視線に非常に敏感に反応します。心配そうな眼差しで見られると自信をなくしてしまって、実力を発揮できなくなったり落ち着きがなくなったりする子もいます。
親というものは、子どもを評価するのではなく、育み受容しながら軌道修正をして導く存在ではないかと私は思っています。集団生活の中でいろいろな面で評価されることの多い園や学校生活を送っていく子どもたちが、家でも親に評価されるのでは息が詰まってしまいます。集団へ入れない理由をお子さんの視点からよく理解できないまま、「なぜみんなと一緒にできないの?」などと注意したり、集団行動を強いたりすると、お子さんをより追い詰めて保育園が嫌いになってしまうこともありますので、ご用心を。
お子さんが帰ってきたら、「今日も一日頑張ったね」と労ってあげて、その日にあった楽しかったことや嫌だったことなど、お子さんの話をよく聞いてあげましょう。何か見えてくるかもしれませんよ。もちろん、お母さんの不安を解消することも大切です。お母さんが安心して送り出してあげれば、お子さんも自信を持って園生活を送りながら徐々に集団へ入っていけるようになります。そのためには担任の先生との連絡をしっかり取りながら、いつも診ていただいているかかりつけ医の先生や地区の保健師さんにもご相談することをお薦めします。